ローリスク不動産投資

不動産のリスクをどう最小限にするか、独自コメント不動産マメ知識を紹介します

鑑定士で勉強したレモン市場について考えてみる

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レモン市場

 

はじめに

不動産鑑定士試験を受験している時、教養科目って合格後は使わないだろって思っていました。ただ、合格後の実務修習期間や鑑定士としての考え方、仲介の現場にいても役に立つことがあります。今回は、情報の非対称性・レモン市場について、なるべく具体的なお話をしていきたいと思います。

 

情報の非対称性とレモン市場とは?

情報の非対称性とレモン市場の話をする前に、完全競争市場の話から話をしていきます。

 

完全競争市場の条件とは?

完全競争市場とは、完全競争が行われる市場をいいます。以下の4つの条件を同時に満たす市場です。

 

  1. 財の同質性
  2. 多数の売り手と買い手の存在
  3. 情報の完全性
  4. 参入・退出の自由

 

①財の同質性とは、製品の差別化がないことです。例えばA社とB社の製品の品質が同じということです。

②多数の売り手と買い手の存在は、売手と買手が多数いる状況です。つまり、売手独占市場・売手寡占市場以外の市場です。

③情報の完全性は、真の品質を知っているということです。なお、この状況にない場合、例えば、売手は真の品質を知っているが、買手は知らないというような「情報の非対称性」が存在する場合、この市場を「レモン市場」といいます。

④参入・退出が、法的な規制が存在せず、特別なコストも必要ないということです。

 

情報の非対称性とは?

情報の非対称性とは、取引する財の品質や取引相手の行動に関して、取引当事者の一方が十分な情報を保有し、他方が十分な情報を保有しない場合に、情報の非対称性が存在することになります。情報の非対称性が存在すると、効率的な資源配分は達成されず、市場の失敗が発生することになります。

 

レモン市場とは?

レモン市場とは、情報の非対称性が存在する市場をいいます。品質の良い財をプラム(もも)と言います。品質の悪い財をレモンと言います。なぜなら、レモンは中身が腐っていても表面がぴかぴかで綺麗な状態で、実際に切ってみないとわからないためです。

 

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レモンとプラム
逆選択とは?

例えば、中古不動産で取引前に実際に購入して住んでみないと真の品質が分からないという市場は、品質の悪い財が市場に多く出回り、品質の良い財が阻害されるという逆選択という現象が起こると言われています。

逆選択の解決策は、シグナリングがあります。シグナリングとは、品質に関する情報を十分に知っている人が品質に関する情報を十分に知っていない人に対して品質を提供することをいいます。具体的には次の章で見ていきます。

 

モラル・ハザードとは?

モラルハザードとは、取引後に依頼人が契約相手の代理人の行動を観察することが困難なことを利用して、代理人が自らの利益を追求し依頼人に損害を与えることをモラル・ハザードといいます。

モラル・ハザードの解決策は、インセンティブ契約の締結があります。具体的には次の章で見ていきます。

 

逆選択とモラルハザードの違いとは?

逆選択は、取引開始前の情報の非対称性であり、モラルハザードは、取引開始後の情報の非対称性のことを言います。

 

 

中古住宅市場における情報の非対称性

中古住宅の現状

日本の中古住宅流通シェアは、約14.7%で欧州の1/6程度と言われています。国土交通省のアンケートによると、「中古住宅は品質に関する情報が少ない」として中古住宅に抵抗があるという理由が上位に来ています。

日本の中古住宅市場は、まさにレモン市場だと思います。国は中古住宅市場の倍増を計画していますが、問題点が多いのが現状です。

 

中古住宅の逆選択におけるシグナリング

中古住宅は、レモン市場です。買手が十分な情報を知らない状況で、情報の非対称性が存在しています。例えば、住宅のリフォーム履歴、住宅の物的状況などがあります。現状、中古住宅の買手は、住宅のリフォーム・修繕履歴や住宅の現状の品質・耐震性がわからない状態で購入を決断せざるを得ないという状況です。

中古住宅市場の品質についての解決策(シグナリング)として、インスペクションが挙げられます。インスペクションとは、中古住宅を購入する際に、建物状況を専門的に調査することです。中古住宅市場において、売手が建物状況を調査し、買主に示すことによって、品質の良い物件であることを示すことができます。

 

中古住宅のモラル・ハザードにおけるインセンティブ契約

中古住宅市場の買主と買主側仲介会社について考えてみます。仲介会社は、通常仲介手数料を3%+6万円(消費税別)を請求してきます。つまり、手数料は売買価格の一定割合となることから、仲介会社は売買価格が高ければ利益が大きく、買主は取引価格が低いほど利益が大きくなります。

この状態では、買主と買主仲介会社は利益相反をもたらしているため、理論上インセンティブ契約をすることが望ましいです。つまり、ある一定の価格より安く購入することが出来た場合、仲介手数料にインセンティブを与えるといったものです。

これは、今の市場でも一部で見られます。例えば、市場相場より安く買いたい不動産業者が仲介会社に対して、相場100のところ70で購入できた場合、仲介手数料3%+6万円(税別)にプラスして企画料や広告料として別途報酬を支払うとするケースや70で購入できた場合、転売時にも仲介に入ってもらうというインセンティブを仲介会社に与えるといった形になります。

 

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任意売却市場はよりレモン市場である

今までのお話で見た通り、中古住宅市場はレモン市場です。ここで、もう一つ任意売却市場についても考えていきたいと思います。私は、任意売却市場がよりレモン市場の色合いが強いのではないかと思っています。

 

任意売却市場について

任意売却特有の取引条件

任意売却をする場合、通常下記の4つの条件で売却します。それはなぜでしょうか。

 

  1. 公簿売買
  2. 瑕疵担保免責
  3. 境界非明示
  4. 現況有姿 

 

①公簿売買について。通常不動産取引では実測売買と公簿売買があります。実測売買は、測量する費用がかかります。公簿売買は登記簿に記載されている面積のまま取引を行います。任意売却を行う場合、売主に資力がありません。従って、測量費を払うことが原則できませんので、公簿売買で取引されます。

②瑕疵担保免責について。通常不動産取引では瑕疵担保を負う取引をします。しかし、任意売却を行う場合、売主に資力がありません。そのため、瑕疵担保責任は原則免責として取引を行います。これは、例えば取引後に何か建物に不具合があっても売主で修復するお金がないためです。

③境界非明示について。測量にかかわってくる内容です。現地で境界標を設置し、隣接地と境界標を明確にするのが目的です。任意売却を行う場合、売主に資力がありません。公簿売買で境界がない場合、境界を明示しないで取引を行います。これを境界非明示とい言います。

④現状有姿について。任意売却を行う場合、売主に資力がありません。例えば、建物に不具合があったりした場合も、修復せず現況のまま引渡しをすることになります。

 

任意売却市場のレモン問題

私が不動産を購入する時は、実測売買、瑕疵担保責任あり、境界明示などの条件で購入します。例えば、公簿売買で取引し、所有権移転後自分で測量をしたところ隣接地と過去に揉めた経緯があり、境界が確定しないということもあり得ます。瑕疵担保免責で取引すると、購入後に建物の雨漏りや建物の不具合が出てきても、売主に瑕疵担保責任を追及することが出来ません。

任意売却市場は、通常の公開市場と比べて、情報の非対称性が強く、リスクがつきものです。また、これは競売についても同じことが言えます。競売はさらに建物の内覧をすることも出来ないですから、任意売却市場よりも情報の非対称性は強いかもしれません。

 

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